筋肉の衰えや女性ホルモンの影響で胃腸のトラブルが起こる
ピロリ菌の感染率は、50代以上で4割にも
年齢とともに衰える胃腸機能。とくに50代頃から胃腸の不調を訴える人が増加します。「その原因のひとつがピロリ菌」と話すのは、消化器内科を専門とする神谷雄介先生です。
「ピロリ菌は、胃酸の分泌が少ない5歳頃までに感染します。明確な感染経路は解明されていませんが、食べ物や飲み水を介して、口から体内に入ると考えられているのです」(神谷先生。以下同)
上下水道の整備により、飲料水の衛生環境などが整った40代以下の若い世代のピロリ菌感染率は低い一方、子どもの頃に上下水道が整っていなかった50代以上の人の感染率は4割程度にも。ピロリ菌に感染すると胃炎が起こります。ただし、すべての人に自覚症状があるわけではないため、気づかずに放置することも多いようです。すると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんの発症リスクが高まることに。
「胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者さんの9割はピロリ菌に感染しています。また、胃がんの原因のほとんどがピロリ菌なのです。慢性的な胃炎や胃の痛みの症状がある人、なんとなく胃の調子が悪いという人は、まず検査を受けましょう」
もしもピロリ菌が見つかったら除菌すること。抗生物質と胃薬の服用で除菌を行うことで、9割前後の人は治療に成功し、症状も改善します。
「ただし、すでに小さながん細胞が発生していることがあるので、除菌後も年に一度は胃カメラで検査することをおすすめします」
ピロリ菌以外にも、加齢により、胃と食道をつなぐ筋肉が衰えて胃酸が食道に逆流し、炎症を起こす逆流性食道炎になる人が少なくありません。主な症状は、胸焼けのほか、ゲップが出やすい、喉の違和感などがあげられます。
「逆流性食道炎と診断されたら、食後2時間は横にならないことが鉄則。食べたものは重力で下がっていきますが、横になると食べたものが下がらず逆流してしまうのです」
自律神経のうち副交感神経が優位になる夜間は、胃腸の働きが活発になるため胃酸が出て痛みやもたれが起きやすい時間帯。食事は就寝2時間前までにすませ、夜8時以降は食べないことが理想です。