シス・カンパニー公演
恋のヴェネチア狂騒曲

7月5~28日/東京・新国立劇場 中劇場
作/カルロ・ゴルドーニ 上演台本・演出/福田雄一
出演/ムロツヨシ、堤真一、吉田羊、賀来賢人、若月佑美、高橋克実、浅野和之、
池谷のぶえ、野間口徹、粕谷吉洋、大津尋葵、春海四方
☎03・5423・5906(シス・カンパニー)

2人の主人に仕える愛すべき召使が
恋と笑いの大騒動を巻き起こす!

ごちそう満載のトレイを2つ掲げてにんまりするムロツヨシ。ポスター写真で彼が扮するのは、2人の主人に同時に仕えて「給料も食事も2倍」せしめようと企む召使で、18世紀イタリアの劇作家カルロ・ゴルドーニの喜劇『2人の主人に仕えた召使(原題)』の主人公だ。その召使が帳尻を合わせようとついた噓が転がりはじめ、周囲の人たちも巻き込んで笑いが広がる。スラップスティック・コメディの原点のようなこの作品は、長い間世界中で愛されて、さまざまな形で上演を重ね、20世紀に入ってからも舞台や映画になって大ヒットした。

その傑作が、脚本と演出を担当したドラマ『今日から俺は!!』も記憶に新しい福田雄一の上演台本・演出で上演される。福田は、舞台では『ブロードウェイと銃弾』『サムシング・ロッテン!』など海外作品も多く手がけるが、自分流の上演台本をつくり演出するのが基本だ。真骨頂は、とにかく笑える作品づくり。その福田の手で、この古典的喜劇が現代にどのように息づくのか、楽しみはつのる。

舞台は18世紀半ばのイタリア、ヴェネチア。わけあって別々にヴェネチアに逃げてきた恋人同士のベアトリーチェとフロリンドは、連絡を取ろうとするが、すれ違いが重なりなかなか会えない。というのも、2人がそれぞれ雇った召使トゥルファルディーノは同一人物で、真相が明らかになるのを恐れた彼がバタバタと走り回り、奇策を企てるから。そこにクラリーチェとシルヴィオというもう1組のカップルも絡み、ヴェネチア中を巻き込む大騒動に……。

出演陣には、多彩な顔ぶれが揃う。まずはコメディアンのイメージから一転、昨年、ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』の二枚目役で新境地を拓いたムロの、さらなる躍進に注目したい。そしてシリアスもコメディもお任せの堤真一と吉田羊、人気急上昇中の賀来賢人と乃木坂46出身の若月佑美が、2組の恋人を演じる。池谷のぶえ、野間口徹、粕谷吉洋、高橋克実、浅野和之といった面々の変幻自在ぶりも見逃せない。とにかく笑って、「ああ、面白かった」と劇場を後にする――。そんな舞台が期待できそうだ。

 

 

2017年度初演時舞台写真/撮影◎細野晋司

チック

7月13~28日/東京・シアタートラム
原作/ヴォルフガング・ヘルンドルフ 上演台本/ロベルト・コアル 
翻訳・演出/小山ゆうな 
出演/柄本時生、篠山輝信、土井ケイト、那須佐代子、大鷹明良
☎03・5432・1515(世田谷パブリックシアターチケットセンター)

ドイツ発、少年2人のひと夏の冒険物語。2017年、日本に初めて上陸し、その瑞々しさで評判になった舞台が再演される。14歳の少年マイク(篠山輝信)は、家ではアルコール依存症の母(那須佐代子)と家庭を顧みない父(大鷹明良)に挟まれ、学校でも居場所がなく、出口のない鬱屈を抱えていた。そんなマイクの前にロシア移民の風変わりな転校生チック(柄本時生)が現れ、夏休みの旅に誘う。2人はボロ車で国中を走り回り、ゴミ山に住む家出少女イザ(土井ケイト)などさまざまな人に出会って……。思春期を過ぎても大人になっても、人生はつらいことばかり。そんな我々の心に一筋の光を灯してくれる感動作だ。

 

 

撮影◎大橋 仁

松尾スズキプロデュース 東京成人演劇部vol.1
命、ギガ長ス

7月4~21日/東京・ザ・スズナリ
作・演出/松尾スズキ
出演/安藤玉恵、松尾スズキ
☎080・7239・8945(東京成人演劇部)
※富山、大阪、北九州、宮城、札幌公演あり

松尾スズキといえば、主宰する「大人計画」が昨年創立30周年を迎え、劇作家、演出家のみならず、大河ドラマ『いだてん』への出演など俳優としても活躍する人気者。その松尾が、学生演劇の初心に帰って「演劇を再び、楽しみたい」と、団員が自身1人だけの新しい劇団をつくった。「劇団ではないな……演劇部です」ということで、名づけて「東京成人演劇部」。第1弾は、「認知症の母とアル中のニート息子」と、その映画を撮る「ドキュメンタリー作家とゼミの教授」の物語。共演に「演劇部のイメージに近い女優」安藤玉恵を迎える、二人芝居だ。超個性派・安藤と松尾のタッグが見逃せない。