イラスト:古村耀子
まだ続くと思っていた結婚生活。ともに暮らした相手を突然喪った妻たちは、いまなにを思う──柿本さん(70歳・仮名)は、その知らせを予期せぬところで受けました。(「読者体験手記」より)

スポーツジムで受けた、突然の知らせ

2年前の冬のある晩、夫は黄泉の国へ旅立ってしまいました。

その日、私は老人介護施設での夜勤を終えて仮眠を取ると、午前中はいつものようにスポーツジムへ。トレーニング後に携帯電話を見ると、おびただしい数の着信履歴が表示されており、娘からは「お父さんが死んだ」とメールがきていました。慌てて電話をかけると、「お父さんが交通事故で亡くなったとさっき警察から連絡があって……」と震えた声で言うのです。

前日の深夜、道を歩いていて後ろから来たトラックにはねられた、運転者の通報ですぐ救急搬送されたものの、数時間後に死亡が確認された──そう娘から聞いて、「え、そんな、どうして?」と私はパニック状態になってしまいました。娘以外の着信は、すべて近くの警察署から。折り返すと「すぐに署に来てほしい」と言われました。

警察署で事故の状況説明を受け、ドライブレコーダーの映像を見せてもらうと、そこには、いつもと変わらない様子で歩く夫の姿が。しかし、次の画面では姿がありません。夫は車という凶器で、あっけなく殺されてしまったのです。悲しみよりも「理解できない」という思いで、胸がいっぱいになりました。