入学すれば身分は「自衛隊員」となって学生手当が支給されるなど、一般の大学生とかなり異なるキャンパスライフを送ることになる防衛大学校。中でも男性に比べて数の少ない「防大女子」について、前回の記事(「女子一期生誕生から約30年。圧倒的男性組織の防衛大学校が女子入校を認めた理由は<やむをえず>だった」)に記しましたが、自身が女性として同大卒である元時事通信社記者・松田小牧氏によると、大学を無事に卒業しても、女子が自衛隊で活躍するには高いハードルが残存しているそうです。松田さんが47人のOG・現役防大生に取材して見えた実態とは。
一昔前の感覚が根深く残る自衛隊
女性幹部自衛官たちは仕事とプライベートを、どのように両立させているのだろうか。
その質問に対して、子どもを持った母親からは残念ながら「両立できている」という答えは一つも得られなかった。「両立していない」「両立している人なんていない」――、みな口々にそう話した。
「みんな両立に向かって頑張っているんだけどね」。
ある現役はそうため息をつく。ほかにも現役の中には、「両方頑張ろうとしたら、どっちもダメになっていたと思う」「私は人生で自衛官をやっている」と話す者もいた。
「自衛隊にはブラック企業みたいな長時間労働がよしとされる風潮がいまだにある」と話す者は多い。幹部として覚えなければいけないこと、考えなければいけないことも多い上に、残業をしなければ「あいつは仕事をしてない」とみなされる文化や「他の人がまだいるのに自分が帰るわけにはいかない」という一昔前の感覚が根深くはびこっている。
このような風土の中でプライベートを重視するには、独身であっても気力が必要になる。
「プライベートでもやりたいことがあるから、そのために仕事をどうこなすかって観点で考えている」
「仕事は適当にやっていた。真剣にやりすぎれば両立は難しかったと思う。何を言われようが、自分の仕事はやるけど時間で区切るようにしていた」
続けている者からもやめた者からも、このような答えが返ってきた。