1000冊の絵本が並ぶ「ふわり文庫」。娘が使っていた木の玩具も人気だとか(撮影:藤澤靖子)
昨年コロナ禍で退会したスポーツジムの代わりを探さないと、と思いつつ、なかなか腰が重たい今日この頃の私。「どうせ長続きしない」「お金がもったいない」など、頭の中は言い訳ばかりだ。年齢を重ねても気後れすることなく未知の世界にチャレンジしている人には、どんな背景や思いがあるのだろう。歳を重ねて「目覚めた」女性に話を聞いてみた。(取材・文:山田真理 撮影:本社写真部)

《江幡さんの場合》周囲の支えで実現したブックカフェ

駅前のスーパーの脇を抜けると、街路樹が豊かに枝葉を茂らせた緑道が始まる。車通りを気にせずに、ゆったりと散歩を楽しむ人たち。石造りのベンチでは、子どもたちがカードゲームに夢中だ。

「34年前に越して来た時は、この団地があるだけの街区で、陸の孤島のような場所だったんですよ」と江幡千代子さん(77歳)は語る。横浜市北部にある雑木林の丘陵地帯が、港北ニュータウンという新しい街に成長していくのを見守るように、江幡さんはさまざまな地域の活動に参加してきた。

たとえば、子どもたちに向けて音楽会や演劇鑑賞会を開く「まちの教室」。そこでミュージカルが上演されたのをきっかけに、脚本から小道具まですべて市民が手がける「ヨコハマ・都筑ミュージカル委員会」が生まれ、江幡さんも長年裏方として携わった。

ボランティアのなかでも特に力を入れてきたのが、本にまつわる活動だ。「横浜市は図書館行政が貧弱で、18区に図書館がそれぞれ1館しかなく、蔵書数も少ないのです」。そのため、地元の図書館を応援する団体「つづき図書館ファン倶楽部」には立ち上げ当初から参加し、活動を続けてきた。

「その一環として、最初の孫が生まれる頃に企画したのが『JiJiBaBa絵本塾』でした。じじばば世代に向けて絵本を紹介したり、読み聞かせの楽しみ方を伝えたりする講座です」。

講座を受けた人たちで「JiJiBaBa隊」というグループも結成し、図書館や地区センターで子どもたちのためのおはなし会を続けている。「私たちが膝に乗せて読んであげたりもするので、お母さんは手が離れてリラックスできるでしょ。何より、ばあばたちがその活動に夢中なの(笑)。絵本には、人の心をつなぐ力があるんだなって実感します」。