《江幡さんの場合》周囲の支えで実現したブックカフェ
駅前のスーパーの脇を抜けると、街路樹が豊かに枝葉を茂らせた緑道が始まる。車通りを気にせずに、ゆったりと散歩を楽しむ人たち。石造りのベンチでは、子どもたちがカードゲームに夢中だ。
「34年前に越して来た時は、この団地があるだけの街区で、陸の孤島のような場所だったんですよ」と江幡千代子さん(77歳)は語る。横浜市北部にある雑木林の丘陵地帯が、港北ニュータウンという新しい街に成長していくのを見守るように、江幡さんはさまざまな地域の活動に参加してきた。
たとえば、子どもたちに向けて音楽会や演劇鑑賞会を開く「まちの教室」。そこでミュージカルが上演されたのをきっかけに、脚本から小道具まですべて市民が手がける「ヨコハマ・都筑ミュージカル委員会」が生まれ、江幡さんも長年裏方として携わった。
ボランティアのなかでも特に力を入れてきたのが、本にまつわる活動だ。「横浜市は図書館行政が貧弱で、18区に図書館がそれぞれ1館しかなく、蔵書数も少ないのです」。そのため、地元の図書館を応援する団体「つづき図書館ファン倶楽部」には立ち上げ当初から参加し、活動を続けてきた。
「その一環として、最初の孫が生まれる頃に企画したのが『JiJiBaBa絵本塾』でした。じじばば世代に向けて絵本を紹介したり、読み聞かせの楽しみ方を伝えたりする講座です」。
講座を受けた人たちで「JiJiBaBa隊」というグループも結成し、図書館や地区センターで子どもたちのためのおはなし会を続けている。「私たちが膝に乗せて読んであげたりもするので、お母さんは手が離れてリラックスできるでしょ。何より、ばあばたちがその活動に夢中なの(笑)。絵本には、人の心をつなぐ力があるんだなって実感します」。