コロナ禍で家にいる時間が長くなった昨今、ペット人気が高まっています。しかし、長い時間を一緒に過ごした先で、避けられないのが彼らとの別れ。ペットの存在感が増した一方でその死によってもたらされる悲しみ、いわゆる「ペットロス」に苦しむ人も増えているのではないでしょうか。そんな中、秋山千鶴さんの物言わぬ小さな友だちであるジャンガリアンハムスターのサムは、全身で生きる姿勢を示してくれたそうで……
中年太りのオヤジのように滑稽な姿に笑った
いつまで経っても捨てられない動物病院の診察券がある。10年以上の時が流れた今でも、時々引き出しの奥に手を伸ばして眺める。
ジャンガリアンハムスターのサムは背中の縦縞が何とも愛らしく、ショップのケージの中でもひときわ元気な子だった。私の見立て通り、わが家に来てもずっとポジティブ。いたずらをして私が叱ると、しゅんとなるのも束の間、すぐに何ごともなかったように立ち直る。精いっぱい生きているのが全身から伝わってくるのだ。
ハムスターの平均寿命は2年そこそこだと知り、できるだけサムが健康で長生きするよう、気をつかっていた。好物のひまわりの種を制限し、おやつを与えすぎず、好んだ野菜のブロッコリーやキャベツは多めに、と。だけど今になって思うと、短い命、もっと好きな物を自由に食べさせてあげればよかったかもしれない。
寿命からすれば発育もかなり早いとわかってはいたが、2、3ヵ月でサムは家に来た当初の倍の大きさになり、お腹が邪魔で痒い所がまともに掻けない時期も。その姿は中年太りのオヤジそのもので、何とも滑稽で笑わせてくれた。
毎日ケージの中で、元気に一人遊びをして走り回る。名前を呼ぶと、機嫌のいい時だけハウスからひょいと顔を出す横着者。私の手の上できな粉を食べ、見上げた顔がきな粉まみれで、笑う私をきみはじっと見ていたっけ。