中島京子さん(左)と小林美穂子さん(右)
シングルマザーと娘、スリランカ人の彼、という小さな家族を中心に、入管行政の問題点に光を当て、「読売新聞」の連載時から話題を集めていた中島京子さんの『やさしい猫』(2021年8月刊)が、第56回吉川英治文学賞を受賞した。選考委員は浅田次郎、五木寛之、北方謙三、林真理子、宮城谷昌光、宮部みゆきの6氏。中島さんが、入国管理施設の問題などについて、小林美穂子さんと意見を交わした『婦人公論』2021年11月24日号の対談を再配信します。(構成=古川美穂)


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生活保護受給者や路上生活者。在留資格を失って入国管理の施設に収容された外国人。コロナ禍でますます困窮する人たちの身に今、何が起きているのか。小説『やさしい猫』で入管行政の問題に焦点を当てた中島京子さんと、生活困窮者支援を長年続けてきた小林美穂子さんが語り合った

外国人の人権と入管の闇

小林 中島さんの『やさしい猫』が本になるのを新聞連載のときから楽しみにしていたんです。

中島 まあ、そうなんですか。

小林 シングルマザーの保育士ミユキさんと娘のマヤちゃん、ミユキさんの8歳年下のスリランカ人で自動車整備士のクマさん。震災ボランティアを機に惹かれあい、さまざまなことを乗り越えて築いた家族の小さな幸せが、「外国人」というだけでクマさんの在留資格の問題のために突然壊されてしまう。入国管理と人権というアクチュアルな問題を背景に、主人公一家がどうなってしまうのかハラハラしながら面白く拝読しました。

中島 ありがとうございます。小林さんとは以前、出版関係の会で一度お目にかかって以来、SNSを通じてもご縁がありましたよね。コロナ禍が始まってからは小林さんたち生活困窮者支援団体の皆さんが、家や仕事を失い困っている方々を助けて東奔西走していらっしゃるのを「すごいなあ」と陰ながら応援していました。

小林 ありがとうございます。中島さんが入管のことをたくさんSNSに投稿されるようになって注目していたら、『やさしい猫』の連載が始まって。その頃ちょうど私たちのところへも、入管で仮放免された外国人の方から次々とSOSが来るようになり、そうした問題を題材に小説を書いている中島さんの存在を心強く感じました。