長い収容生活で心身ともに破壊され

中島 入管施設は、ビザが切れた「オーバーステイ」などで在留資格を失い退去強制令の対象となった外国人の方を、送還が可能になるまで収容します。難民で帰国すると命に危険があるとか、日本に家族がいるなど、さまざまな事情で送還に応じられない人たちもいて、収容の長期化が問題になっています。

『やさしい猫』(著:中島京子/中央公論新社)

小林さんがおっしゃった「仮放免」というのは、帰国できない人たちが入管施設の外で暮らす制度ですが、これまで簡単には許可がおりなかった。ところが、入管施設は大部屋で雑居が基本なので、コロナ下でクラスター化しては困ると、急にどんどん仮放免するようになったんですね。でも、在留資格がない人たちは、就労が禁止されるなど、基本的な権利がないんですよね。

小林 入管は無責任です。仮放免だと働いてはダメと言われ、行動も制限される。また、使える制度もなく、健康保険にも入れず医療にもかかれない。かといってすぐに帰国できる状況にもない。ではコロナ下の日本でどうやって生きていけというのか。

中島 その結果、炊き出しの列に並んだり、野宿したりせざるをえない外国の方も増えました。

小林 私たちの運営するシェルターには今、仮放免の方たちが5人暮らしています。彼らは長い収容生活で心身ともに破壊され尽くしています。深刻なトラウマでフラッシュバックに苦しむ人や、職員による「制圧」という名の暴力を受け、肩や腰を痛めてしまった人も一人や二人ではありません。

中島 それは入管施設で負傷されたのですか。

小林 はい。治療にはお金も時間もかかります。つらかった体験のフラッシュバックに苦しめられ睡眠薬を服用しないと眠れない方も多い。苦しんだ経験は痛みとして身体症状にも表れ、鎮痛剤も欠かせない。自由に診療を受けられないため、慢性的な持病を悪化させてしまった人もいる。なぜここまでひどい目に遭わなければならないのでしょう。