唾液はどこから出ているのか? 目の動きをコントロールする力は? 人が死ぬ最大の要因とは? おならは何でできているのか? 私たちの体は謎だらけ。その不思議に迫った、外科医の山本健人さんによる累計16万部突破のベストセラー『すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋、編集してお送りする本連載。Twitterアカウント「外科医けいゆう」のフォロワーが9万人を超える山本さんが著書に込めた思いとは――
人体は想像以上にずっしり重い
医学生時代に経験した解剖学実習で、大変驚いたことがある。
それは、「人体がいかに重いか」という事実だ。
脚は片方だけでも10キログラム以上あり、持ち上げるのに意外なほど苦労する。一見軽そうな腕でも、重さは4〜5キログラムである。想像以上にずっしり重い。
私たちは、身の周りにあるものの重さを、実際に手にしなくともある程度正確に推測できる。だが不思議なことに、自分の体の「部品」だけは重さを感じない。日常的に「持ち運んでいる」にもかかわらず、である。
一体なぜなのだろうか?
その答えを求めると、美しく精巧な人体のしくみが見えてくる。
人体がいかに素晴らしい機能を持っているか。
健康でいる限り、私たちはそのことになかなか気づけない。
私たちは、たとえ走っている最中でも道路標識を読むことができ、前から歩いてくる人をよけることができる。頭は上下に激しく揺れているにもかかわらず、視界が揺れて酔うなどということはない。