両足の進歩を遂げてきた医学(提供:写真AC)

飲み薬でC型肝炎が治る、ありえないを現実に

その後、医学はさらに長足の進歩を遂げてきた。

1981年、医学雑誌『ランセット』に報告された未知の病気は、主に性交渉によって伝播し、感染者の免疫機能を破壊した。のちに「後天性免疫不全症候群(AIDS)」と名づけられるこの病気は、ウイルスが原因であった。「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」である。

驚くべきは、1983年にはウイルス発見の報告がなされ、現在までに強力な治療薬が生み出されたことだ。当初、その病名告知は「死の宣告」とまでいわれたが、今やHIV感染症は制御可能な「慢性疾患」となった。

C型肝炎ウイルスは、実に厄介な病原体だ。1989年に初めて発見されたこのウイルスは、人に感染すると慢性肝炎や肝硬変を経て肝臓にがんを引き起こす。これまで世界中で多くの人命を奪ってきた凶悪なウイルスである。

ところが近年、直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals; DAA)と呼ばれる画期的な治療薬が生まれ、戦局は一変した。多くのC型肝炎が、「治癒」を目指せるようになったのだ。

飲み薬でC型肝炎が治る―。

ひと昔前には考えもしなかった未来が、今ここにある。