2022年4月17日放送の『ザ・ノンフィクション』で妻のがんと夫婦で闘い続ける1400日の様子が放映された宮川大助さん、花子さん。花子さんが腰の痛みを訴え、がんの診断を受けたのは2018年3月のこと。仕事をしながら治療を続けていたものの多発性骨髄腫へと進行し、19年6月に緊急入院。一時は余命1週間の状態だったという。相方で夫の大助さんもこれまで脳出血や脊柱管狭窄症、感染症等で入退院を繰り返しており、互いを支え合ってきた2人。闘病の日々をキレよく語る。好評発売中の『婦人公論』5月号より特別に記事を公開します(構成=山田真理)
<前編よりつづく>
「花子」という名は僕がつけた
花子 でも大助くんにとってははじめての介護。いまはすっかり介護男子やね。
大助 しかも老老介護ですから(笑)。これはひとつ学んだことやけど、病人をお風呂に入れるとき、介護人まで裸になったらダメだね。裸同士だからうまく抱けないし、石鹸で床がぬるぬるしてたら、よけいに危ない。しっかりしたものを履いて、なにかしら引っかかるものを身に着けたほうがいいです。ずぶ濡れになったら、それはあとで脱げばいいことで。
花子 私、お風呂でこかされて尾てい骨にヒビが入ったもん。痛みが麻痺してたときだったから気づかなくて、あとでレントゲン撮って知ったことだけど。
大助 また、ようそんなことまで蒸し返す。(笑)
花子 いやいや、一所懸命やってくれはってると思います。いつも私のベッドの下で寝て、朝はごはんもつくってくれる。
大助 お皿の上の豆なんか、箸でようつまめなくて転がってるのも、みんな僕が食べてます。
花子 抗がん剤打って4日くらい経った調子がいい日は、車に乗って一緒にスーパーに行くね。
大助 家から車に乗る。お店に着いたら降りる。また帰るときに乗って、降りる。これが嫁はんにとって、立ち上がって歩く唯一の運動になるし、外気にあたるのもリハビリになる。暑い寒いをちゃんと肌で感じないと。
花子 でも大助くん、かごも持たずに車椅子の私の膝に、コーラとか醤油とかぼんぼん乗せてくから。重たいものが続くと、膝痛いねん。石抱きの刑やで。
大助 痛いなら、神経がちゃんと通ってるってことだから、安心や。(笑)