2021年の末、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が13年ぶりに宇宙飛行士候補を募集して話題になりました。一方、実業家の前澤友作さんが自費で宇宙旅行をし、宇宙が身近になる兆しも──。日本人初の女性宇宙飛行士・向井千秋さんに、宇宙開発の歴史や未来について聞きました(構成=山田真理 写真提供=JAXA/NASA)
スケールの大小で見えてくるもの
酒井 今日はお目にかかれて嬉しいです。向井さんを前にして言うのは憚られるのですが、私は怖がりなので宇宙に行きたいと思ったことがなくて(笑)。そもそも人類は、なぜ宇宙を目指すようになったのでしょう。
向井 それは、「未知なるものの探求」が人類の根源的な欲望としてあるからです。そして、その欲望を満たすために行動するから技術は発達していく。たとえば自動車や飛行機は、より速く、より便利に目的地に到達したいという欲望があったから進化してきたわけです。
酒井 なるほど。
向井 現在の宇宙開発も同様です。1957年にソ連が人工衛星のスプートニク1号を打ち上げたから、58年にアメリカがエクスプローラー1号を打ち上げた。61年にソ連がボストーク1号で世界初の有人軌道飛行に成功(ガガーリンが搭乗)。69年にはアメリカのアポロ11号が月面着陸し、2000年に国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在が可能になった。そして今は、火星探査を目指している。こうして技術力も対象範囲もどんどん拡大しているわけです。