2022年7月10日、愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)で始まった大相撲名古屋場所。2年半ぶりに観客席の上限なしとなった今場所は、盛り上がりつつも波乱の幕開けに。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。
攻防の真っ最中に、立行司の式守伊之助が…
大相撲は何が起こるかわからない。特に今場所は予想できないことが次々と起こり、誰が優勝するかなど考えがおよばない状態だ。
そのナンバー1は、中日8日目の結びの一番。
横綱・照ノ富士と横綱初挑戦の前頭4枚目・若元春が、これぞ見たかった四つ相撲という熱戦を2分以上繰り広げていた。その攻防の真っ最中に、立行司の式守伊之助が「廻し待った」(取組の途中で廻しが緩んだ時に止めて締め直すこと)の声をかけたのである。照ノ富士は力を抜き、若元春は力を抜かず照ノ富士を寄り切った。
「廻し待った」は時折あるが、勝負をかけて動いている時はまずい。伊之助は、以前から力士の動く方向にいたりして判断が問題だと思っていたが、このタイミングの悪さは前代未聞だ。かなり前だが、下の方の相撲で廻しがはずれて「不浄負け」になった力士がいたが、幕内の力士は自分に合った長さの廻しをきつく締めている。伊之助は若元春の廻しの結び目が気になったのだと思うが、この程度ではずれないように見えるが…。
勝負審判たちの土俵上での長い協議の末、「廻し待った」の時の大勢からの取り直しとなった。場内説明後、審判部長の佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)が土俵に上がり、ビデオ室の指示を聞き体勢を確認。しかし、テレビ画面に映し出された以前の状態になかなかならない。「佐渡ヶ嶽親方のスマホに画像を送れ!」と、私はテレビの前で叫んでしまった。佐渡ヶ嶽親方がスマホを懐に入れていたらの話だけれど。
相撲再開後、照ノ富士は持ち前の不動心で、若元春を下手投げで転がした。
しかし、若元春は頑張った、あなたは偉い!