女性たちよ、国境を越えて手を携えていけ
鈴木綾33歳。東京の外資企業で6年間働いた後にMBAを取得し、ロンドンの投資会社に転職。現在はそのロンドンでスタートアップ企業に勤める女性である。
このキャリアからどんな人が思い浮かぶだろう。世界に伍して闘う日本人女性?――ではないのだ。
実は日本人でもイギリス人でもないと最初に告白している。母国で日本語を学び来日。辞書を引きながら言葉を身につけ文章も上達。本書はこのペンネームで日本人向けに書いた初のエッセイである。
大好きだった日本を離れたのはセクハラなどのハラスメントやストーカー被害に懲りたからだ。ロンドンには同じような思いをして日本から逃げだした優秀な日本人女性が何人もいる。この「人材流出」に危機感を持たない日本という国が不思議でたまらないという。
イギリスはフェミニズム発祥の地だが、実は真面目な女性たちは便利に使われてきた。社会生活の中で常識のように残る性差別意識が問題で、幼いころに受けた「女性だから人を手伝う、思いやる」という教育が仕事の上でも影響していた。
きちんと仕事を仕上げる女性は信頼され、男性は自分の仕事が奪われると感じる。男女平等とは難しいものだ。
独身にやさしくないのもロンドンの特徴だ。何をするにも基本はカップルというパートナー文化はとても面倒で、ひとりで行動していると相手を紹介しようかという要らぬおせっかいが飛んでくる。身だしなみなどにもイギリス独特の習慣があることを初めて知った。
女性の地位向上が喫緊の課題である日本だが、ただポジションだけを与えればいいはずがない。本書はロンドンで気づいたキャリアアップを目指すための心構えや、昇進するためにするべきことを示唆してくれる。
日本人の、外国人の、女の、男の、ふりで世を論じるのは面白い。著者には国籍不明のエッセイストとして今後も活躍してほしい。