ピリピリしない師弟関係
小遊三 師匠とは9歳違い。実家の兄貴と歳がほぼ同じこともあって、勝手に“兄”のようにも思い、弟子にあるまじき失礼なこともしていました。
遊三 日記に書いてるよ。(笑)
小遊三 カバン持ちの頃から、横で口笛吹いて歩いていたし、メシ食うときも、師匠の前でアグラをかいて。
遊三 肩を揉んでやったりな。俺のほうが気をつかって(笑)。でも、小遊三は細やかに気持ちが働く男だったよ。それは今も変わらず、誕生日には必ず「おめでとうございます」の電話をくれるし、番組の中で「今日はうちの師匠の誕生日です」と言ってくれたり。節目節目には料理屋に招待もしてくれるしね。
小遊三 そんな大層な……。師弟関係というと厳しくてピリピリしているところもあるけれど、うちはそうじゃなく、師匠の人柄でしょうけど和気あいあいの感じで。そこはラッキーというか、僕に見る目があったというか(笑)。周りを見ていると、逃げ出したくなるような師匠もたくさんいましたから。
遊三 それぞれだからね。さっきも話したけど、あたしの師匠も柔和な人で、「出世前の男が便所掃除をするものじゃない」と、弟子にはやらせず、自分でやるくらいだった。
小遊三 その圓馬師匠とうちの師匠との会話で語り継がれているエピソードがあります。圓馬師匠が弟子たちに「女遊びはしてもいいけど、お前たちは別れ方が下手。きれいに別れなくちゃいけない」と言うと、うちの師匠、すかさず「別れそこなったのが、師匠の今のカミさんですね」。(笑)
遊三 そういうの黙ってられないんだよ。前座の頃、師匠のお宅に行くと、部屋で師匠が一所懸命に掃除機をかけてる。師匠のそんな姿を見て、「こりゃマズいところに来ちゃったかな」と思ったものの、ガラッと戸を開けて「師匠、掃除機じいさんですか」。「バカヤロー! お前がやるんだ!」と怒鳴られた。(笑)
小遊三 うちの一門は、代々そういうことを言い合える土壌があったんですね。