左:三遊亭遊三さん 右:三遊亭小遊三さん(撮影:大河内禎)
今も高座で熟練の噺を聴かせる三遊亭遊三さん、84歳。落語はもちろん、『笑点』の大喜利でも大活躍の三遊亭小遊三さん、75歳。互いに「自慢の弟子」「師匠は親以上。精神的な支え」という二人の、半世紀以上にわたる交わりは──(構成=福永妙子 撮影=大河内禎)

寛大で、とにかく怒らない師匠

遊三 小遊三がうちの門を叩いて54年、二人で雑誌の対談なんてはじめてだよ。

小遊三 世間話をしてる、いつもの感じでいきましょう。

遊三 そうだね。

小遊三 師匠は60代の頃とほとんど変わらないですね。歳相応に歳をとっていない。

遊三 いや、歩くのは遅くなったし、しゃべるとむせるし、このあいだは何もないバス停のそばでつまずいた。

小遊三 そういうのはこの歳でも同じ。僕はうちの中でもつまずいてます。(笑)

遊三 高座に上がるのは、今やリハビリだよ。

小遊三 いや、師匠の高座姿はピッとしてるし、芸も若々しい。普通の年寄りとはわけが違う。

遊三 ひっ。(笑)

小遊三 これといった大病もしたことないですし。

遊三 大病ねえ……電車に乗ってるとき胆石が大暴れして、降りた駅で駅員さんが救急車を呼んでくれて病院に運ばれたことはあった。痛くて七転八倒。でも、痛み止めの注射を打ったら落ち着いて、手術も入院もせず、「帰っていいですよ」と。

小遊三 それくらいだもの。以前、師匠とヨネスケさんと3人で人間ドックに行ったら、検査の数値は師匠のが一番よかったんですから。師匠はお酒も飲みませんしね。

遊三 飲まないというか、飲めない。ちょっと飲んでも頭ガンガン、心臓バクバク。そのかわり、お前さんには俺の分まで飲んでいただいて(笑)。前座の頃からよく飲んでたね。毎朝うちへ来るとき、飲んだ翌日は目を合わさずに「おはようございます」。目が赤いのを見られるとバレると思ってだろうけど、その時点でもうわかっちゃう。(笑)

小遊三 でも師匠は「飲むな」とは言わない。寛大でしたよね。とにかく怒らない師匠で。