この記事の目次
〈原因〉子宮内膜という組織が、子宮の外で増えてしまう病気。月経で悪化する 〈症状〉初期は月経痛、進行すると排便痛や性交痛、不妊症、卵巣がんに 〈予防〉子宮内膜症予防にはピルの有効活用を
〈治療〉薬物療法と手術療法をうまく組み合わせて

〈治療〉薬物療法と手術療法をうまく組み合わせて

治療法には大きく分けて薬物療法と手術療法があり、治療にあたっては痛みの改善、病巣の摘出とともに、不妊症があればその治療を念頭におかなければなりません。ですから、患者さんの年齢、症状の重症度、進行度、さらには妊娠希望の有無に応じて治療法を患者さん別に選んでいく必要があります。

薬物療法には痛みを抑える鎮痛剤と病巣の進展を抑えるホルモン剤があります。鎮痛剤は効果が弱く子宮内膜症の進行を抑えることができないといったデメリットがありますが、排卵をおさえないために薬を服用しながら妊活もできるというメリットがあります。

一方ホルモン剤は以前は子宮内膜組織の増殖をもたらすエストロゲンを抑え、閉経の状態を作り出す偽閉経療法が主として行われていましたが、のぼせなどの低エストロゲン症状が問題でした。そこで近年は内膜症病巣を子宮内膜を萎縮させる作用があるプロゲスチンを含んだ製剤が、長期にわたり安全に使用できるので主流となっています。プロゲスチン製剤にはエストロゲン製剤も含有する低用量ピルとプロゲスチン単剤があり、それぞれメリットとデメリットがあるので、薬の選択にあたっては婦人科の先生と良く相談して決めていきましょう。

手術療法は薬物療法が無効な時や不妊症を合併している場合に選択されます。子宮内膜症病巣を除去し、子宮や卵巣を元通りに戻す事が原則ですが、卵巣チョコレート嚢胞を手術する際、嚢胞を摘出すると嚢胞壁に正常組織が付着して、残った卵巣組織中の卵子の数が減ってしまうことがあるので注意が必要です。40歳以上の方で卵巣チョコレート嚢胞が直径4センチ以上なら、癌化の防止のために卵巣の全摘手術が必要なこともあります。また、手術後の症状再発もおこりうるので、症状が強く妊娠を希望しない方には子宮の全摘を選択することもあります(根治術)。

また、子宮内膜症は子宮や卵巣、直腸を巻き込んだ強い癒着がみられる事が多いので、手術は慣れていないとやや困難なことがあります。そして手術は開腹手術ではなく、腹部に開けた穴から器具を入れて行う腹腔鏡手術が、傷跡が目立たず回復が早いのでお薦めです。ただし特有の技術が必要なので、技術認定を受けた医師に任せたほうが安心といえるでしょう。技術認定医は、日本産科婦人科内視鏡学会のホームページに名簿が掲載されていますのでご参照下さい。