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友人、仲間、親友――距離感は違えど、どの関係性も愛おしい。
貧困のあまり代理母出産を引き受ける女性を描いた話題作『燕は戻ってこない』など、女性の心裡を鋭く深く描く作家・桐野夏生さんが考える「健全」な友人関係とはー。

良好な友人関係を続けることは、案外難しい。そう思っている人は、多いのではないだろうか。今は、LINEやメールで無難にコミュニケーションを取ることができる。それで何とか、角を立てずに済むことがあるけれど、実際に顔を合わせると、表情や口調が気に障ったり、何となくしっくりしないこともある。そんな時に焦って気を遣い、思ったことも言えずに疲れたりもする。

私には、高校時代から仲良くしている友人たちがいる。かれこれ50年以上の付き合いになるが、ずっと仲が良かったわけではない。

20代、30代は、誰もが夫の転勤や子育てなどで余裕がなく、あまり会うこともできなかった。私は一人だけ仕事をしていたから、ほとんどが主婦になった高校時代の友人とは、疎遠になってしまった。悩みの質が違う、と互いに思っていたのではないだろうか。

今なら、SNSなどで簡単に繋がり続けることができただろうけれども、当時は年賀状やクリスマスカードの遣り取りで近況を知るか、噂で聞く程度だった。

再び親しくなったのは、皆がやっと落ち着いたと思える50代だっただろうか。誰もが、ひと波乱乗りこえたというような充実した表情をしていた。今では、LINEで近況を報告し合い、年に2、3回会って食事をする。コロナ前は、海外旅行も何度かした。