老いとともに、重症化する悪癖、病。やがてその行動は家族ではどうすることもできないほどに……。小岩井葵さん(仮名)の父親は、エリート官僚だった頃には想像もつかなかった姿に変わってしまいました。その衝撃の実話はーー

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◆焼きイモ10本1万円、イワシの缶詰100缶

父は有名国立大学を出た元エリート官僚で、いつも他人を見下していた。「お前らのようなバカ」「お前らとは住んでいる世界が違う」が口癖。しかし、職場でのストレスと生来の酒好きが原因でアルコール依存症となり、脳梗塞の発作を何度も繰り返した。そして退職後は感情の抑制がきかなくなり、過食するようになったのだ。

ヨーグルトを一度に10個、板チョコを10枚などは当たり前。焼きイモ屋が通ると「おーい、おーい」と杖をついて左半身不随の体でヨロヨロと追いかけ、騙されて10本1万円で購入し、ご機嫌で帰宅する。そして家族が怒ると、食べものを布団の中や押入れ、机の引き出しに隠す。かびた饅頭や干からびた大量のタラコなどが、家のいたるところから出てくるのだ。

さらに、通販で一気買いをする。ある日、イワシの梅肉煮の缶詰が100缶届いた。テレビで見て、衝動的に電話で注文したものの、すべて忘れて食べようとしない。半生の一夜干しが届いたときは、強い臭気に母と私は茫然とするばかりだった。

また、元気な頃から見下していた家族に対しては、「ヘルパーは信じられるが、お前たちは信じられん」と断言。「お前たちの買ってきたものには毒が入っているかもしれん」などと言って、買い物はヘルパーに依頼する。

買わせたものを見てみると、松阪牛のサーロインステーキ肉1枚2000円×2パック、九州産の真鯛2500円、大トロ刺身3000円、焼津うなぎの白焼きなどなど、目が飛び出るほど値の張る食材が。自分だけ最高級の品々を食べようと、私たちのいぬ間にヘルパーに頼んだのだ。