紫苑さん「最小限のモノで生活するより、無駄でも目に美しいものの中で暮らしたい」(写真提供:Photo AC)
多くの人にとって、老後の生活を支える柱の一つとなる年金。71歳のひとりシニア・紫苑さんは、母子家庭で、二人の子どもを育てながらフリーランスで仕事をしてきたため、年金の額は月に5万円。しかし、お金を遣わなくても安心して暮らすための工夫の数々をブログに記すと話題となり、楽しい毎日の様子は新聞やテレビなどでも紹介されるようになりました。その紫苑さん「最小限のモノで生活するより、無駄でも目に美しいものの中で暮らしたい」という考えに沿って“捨て活”を進めているそうで――。

捨てることができない人は「見えない場所」に依存している

片付けや断捨離が「ブーム」になって、私もたくさんのモノを思い切って捨ててきました。私にとって一番難しかったのがこの「捨て活」だったと思います。若い頃から好きなモノしか持たない、つまり「ときめく」モノしかわが家にはない、ハズだからです。

私の場合、本と洋服。この2種類です。

子どもが育ち、家を出て行ったあとには子どものモノが残り、これらは私には「ときめかナイ」のですが、子どもたちには「ときめくグッズ」、「捨てないで」という。「じゃあ、自分の家に持っていけば」というと、「いやだ、ここに置いといて」と宣(のたま)う。

目の届く場所=自分の家にはないけど、どこか(実家)にあると思えば安心するのでしょうか。モノを捨てることができない人の多くはこの「見えない場所」に依存しているのかもしれません。

見えないから片付けなくていい、でも「いつか」来る必要な日のための安心。

子どもたちが結婚した当初はいつ帰ってくるのか心配で(笑)、捨てずにとってあったのですが、時間が経つにつれて落ち着いてきたようで、捨ててもわからないくらいになりました。子どもたちも徐々に「あれ、捨ててもいいよ」と言うようになりました。

生活が落ち着くと必要と不必要がはっきりしてくる。それはそばにあっても遠くにあっても同じですね。