2013年から若年性アルツハイマーの母親と同居する岩佐まりさん。2年前には父親も認知症と診断され、ダブル介護が始まりました。認知症専門医として訪問診療を行う長谷川嘉哉先生とともに、本人や家族が病とうまくつき合っていくために必要なことを語り合います。(構成=篠藤ゆり 撮影=洞澤佐智子)
MCI診断までに3年かかった理由
長谷川 岩佐さんはお母さまを自宅で介護なさっているそうですが、期間はどのくらいになるんですか?
岩佐 母は58歳で軽度認知障害(MCI)と診断され、60歳で若年性アルツハイマー型認知症を発症しました。当時、両親は大阪、私は東京。両親のいさかいが増えて一時的に母を東京に呼び寄せるなど紆余曲折あり、9年前から同居介護をしています。2年前には、結婚を機に住まいを故郷の大阪に移しました。母は今年74歳です。
長谷川 それは大変ですね。病状はどのような感じですか。
岩佐 6年前の大腿骨骨折をきっかけに自力で歩くことができなくなり、今は要介護5です。最近は嚥下の力も弱まってきました。
長谷川 私たち医師は、若年性と高齢者の認知症は分けて考えます。進行スピードもご家族の負担も、異なる側面がありますから。ただ、MCIから徐々に始まるという点では同じ。進行段階を四季で分けるなら、MCIの「春」、記憶障害や見当識障害などの中核症状が出始める「夏」、妄想や暴言などが増える「秋」、そして生活のすべてに介助が必要になる「冬」です。
岩佐 実は実家で一人暮らしをしている81歳の父も、2年前に認知症と診断されまして。脳梗塞を患い、右半身にマヒも残っています。現在は要介護3で毎日ヘルパーさんに来てもらっていますが、母と違って進行がゆっくりで驚きました。日付や曜日がわからない、自分で薬の管理ができないなどの中核症状はあるものの、今は月に1回、様子を見に行く程度ですんでいます。