精神科医の片田珠美さん曰く、最近では《パワハラ》にまつわる自己正当化の事例がとくに増えているそうでーー(写真提供:Photo AC)
自分にとって都合の悪いことは棚に上げ、うまくいかないことがあるたびに「私は悪くない」と主張して他人や環境のせいにする……。「このような病的ともいえるほどの自己正当化が蔓延している」と指摘するのは精神科医の片田珠美さんだ。片田さんは「自己正当化が強すぎると、やがて周囲から白い目で見られるようになり、取り巻く状況がますます悪化してしまう」と警告を発します。最近では《パワハラ》にまつわる自己正当化の事例がとくに増えているそうで――。

上司のチェックを「監視されている」と訴えたD

自分の落ち度を注意されると、「パワハラ」と騒ぎ立て、「私は悪くない。むしろ被害者だ」と主張する人は少なくない。

ある企業では、30代の男性社員Dさんが「ミスが多い。もっと注意深く書類を作成しろ」と上司から叱責されて書類をいちいちチェックされるようになり、それに不満を募らせたのか、「監視されている。パワハラだ」と訴え、大騒動になった。

もっとも、このDさんのミスでは、同じ部署の同僚の多くが迷惑していたので、上司の叱責もチェックも当然だという声が圧倒的に多かった。何しろ、Dさんは顧客が申込書に記入した内容をパソコンに入力する作業を担当していたのだが、生年月日さえ間違えることがしばしばあったのだから。