ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は「再びの歯の話」について。以前通っていた歯科医院でのインプラント治療がうまくいかず、別の歯科医による処置でようやく一息ついたスーさん。しかし埋めたはずのインプラントがぐらぐらしていることに気づき――。(文=ジェーン・スー イラスト=川原瑞丸)

再び歯の話を

再び歯の話をするとは思っていなかった。まるで一大サーガだ。

ある日、右上の奥歯が割れて物語が始まった。信頼する歯科医に任せたら、インプラントのビスを斜めに埋め込まれた。なんという災難。

その上、左上の歯までインプラント治療が必要だと畳みかけてきた。まるで、絶大な信頼を寄せていた村の長老が悪人だった、みたいな展開。これはまずいと尻尾を巻き、返金も求めず私は逃げた。我ながら腰抜けだ。

勇者スーはめげずにインターネットの大海原を航海し、評判の良い歯科医を発見。前の歯科医院から200メートルしか離れていなかった。メーテルリンクの『青い鳥』でもパウロ・コエーリョの『アルケミスト』でも、大切なものはすぐそばにあるという教訓で物語が締められていた。まさにアレだ。こっちは始まったばかりだけれど。