イタリア発、集落の空き家をホテルとして再生し、一帯で宿泊経営を行う分散型宿泊施設の考え方を指す「アルベルゴ・ディフーゾ」。ノンフィクション作家の島村菜津さんは、空き家問題の救世主になるといわれるその哲学と実践を、取材を通じて掘り下げてきました。煤だらけの壁、テレビも冷蔵庫も電話もない、インスタ映えとは無縁の料理。これらがなぜ人を魅了するのか? 島村さんは「人が手をかけ続けることが大切」といいますが――。
増える廃村と空き家
イタリア半島は、島国である日本のほぼ5分の4の大きさだ。
そこには現在、約700万戸(2011年 国立統計局調べ)の空き家が存在しているという。
さらに、中山間地に位置する5672の市町村に絞れば、空き家の数は、だいたい200万戸になるそうだ。
そして完全に人が住まなくなってしまった廃村は、同年のフィレンツェ大学の調査によれば、184村だという。
一方、日本の空き家は、2018年の総務省の調べによれば約846万戸で、空き家率は13.6%と過去最多を更新した。
そのうち中山間地がどれほどの割合を占めるのかは不明だが、国内では「消滅集落」と呼ばれている廃村は、2015年の調べで157村だった。
どうして、イタリアと日本には、空き家が増えているのか。