「リ・バース60」は、我々アラ還の強い味方
(上から続く)
狭小戸建てを扱う不動産仲介業者O社で「たらい回しの刑」に遭い、ようやく会えた担当者S氏からは「塩対応」をされながらも、まだ私は、一縷の望みを抱いていました。アラ還にはアラ還なりの戦い方、最後の手段があるからです。S氏の口からは、いまだ提案されていませんでしたが、私は知っていました。住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の「リ・バース60」という、60歳以上の人を対象にした住宅ローンがあることを。
これは、リバースモーゲージ(不動産担保ローン)の仕組みを利用した住宅ローンで、60歳以上の人が、年金しか収入がなくても、組める住宅ローンです。一部の金融機関では「リ・バース60」は50歳から申し込み可能なので、私でも対象になります。このローンの利点は、返済が利息分のみということ。死亡時に、銀行側が担保としていた購入物件を売却して清算します(リコース型を選べば、相続人が一括で元金を支払って物件を相続することもできます)。
高齢者が生きている間は住み続けられ、死亡時には銀行が清算してくれるので、私のような単身・子なしで相続人のいない人には、死後の不動産売却の手続きが省けて、かえってお得です。
「リ・バース60」は、我々アラ還の強い味方です。なので、少々脇道に逸れますが、ここで詳しく紹介させてください。このローンで借りられるのは、老後の住宅の住み替え・リフォーム資金です。例えば、土地を買って一戸建てを建てたり、いま住んでいる古い家を建て替えたりリフォームしたりする時、この融資が受けられます。
自立した高齢者向けのマンション「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」の入居時一時金の支払いにも、このローンが使えます。毎月の支払いは利息分のみで、元金据え置きのため、利率は普通の住宅ローンより高いものの、支払額は少なくなる計算です。
支援機構のサイトによると、申込時の年齢は平均69歳。半数ほどが60代で、70代も多く、わずかですが80代以上の人もいます。本人年収は平均で392万円ですが、200万円以下の人も2割ほど、300万円以下の人も3割ほどいます。ふつうの住宅ローンが厳しい高齢者が、自宅に住み続けられるようにと用意された「セーフティーネット」であることが分かります。
融資額の上限は8000万円です。ただし、物件の担保評価額の50%または60%までしか借りられません。ここがくせ者です。担保評価額は、一般的に、時価の60~80%とされます。つまり、リ・バース60を使って借りられる限度額は、
・物件購入額×担保評価割合(0.8~0.6)×融資割合(0.6~0.5)
となります。つまり、物件購入額の5~3割ほどしか融資を受けられないわけで、残りの5~7割は自己資金で用意しておかなければなりません。担保評価は、物件の築年が古くなるほど低くなります。