火入れ直後の焼畑(『森林に何が起きているのか――気候変動が招く崩壊の連鎖』より)
カナダ東部で山火事が相次いで起こり、その煙が隣国アメリカにまで流れてニューヨークでは深刻な大気汚染が起きています。森林科学の第一人者である岡山大学名誉教授の吉川賢先生いわく、気候変動の深刻化は、予想がつかない広がりで森林生態系をむしばんでしまうとのこと。例えば、持続性の高いシステムだった焼畑農業が、熱帯雨林を破壊する原因だと言われるようになったことには、理由があるそうで――。

焼畑は森林を破壊するのか?

熱帯林を破壊している元凶と言われている焼畑について見ておこう。焼畑は森林の生産力を利用して農業生産を行うアグロフォレストリーの一種である。

アグロフォレストリーが中世ヨーロッパではじまった当初は、農業生産を高めるために林産物生産を付随させたシステムであった。

しかし、林業と組み合わせた農業、畜産は、食料と林産物を同時に生産するだけでなく、地域の生態系を保全できる持続性の高い生産システムである。

農業と林業の組み合わせは、作物と林産物を同じ場所で同時に生産する間作(かんさく)( 木場作(こばさく)とも言う)と、時間的に分離する焼畑に分けられる。

間作は、植林してからしばらくのあいだは作物を木々のあいだで育てて、農業生産をしながら森林を育成する。樹木が大きくなって林床の作物に十分に日があたらなくなるまで、樹木は強い日射しや強風から農地を守ると同時に、成長することで炭素を蓄積しながら木材を生産する。