岡田先生「ADHDは自閉スペクトラム症などとともに発達障害(神経発達症)のひとつに位置づけられている」(写真提供:Photo AC)
うつ病、PTSD、統合失調症、双極性障害…多くの現代人を苦しめる「心の病」は、脳のちょっとした変化から生まれます。ADHDもそんな脳の働き方の違いから起こることが知られていますが、その背景は多様でもあるとのこと。様々な角度からその病態の解明に挑むのは児童精神科医・岡田俊さん。その岡田先生によれば、ADHDは自閉スペクトラム症などとともに発達障害(神経発達症)のひとつに位置づけられているそうで――。

ADHDは生涯にわたって持続する

ADHDは発達障害の一つであり、生涯にわたり困難が持続することも多い障害です。

現在、ADHDの有病率(診断基準に当てはめると診断可能な人の割合)は、学童期の子どもで3〜7%、大人では2.5%程度とされています。

では、大人になるまでに半数の子どもたちは「治った」のでしょうか。

ADHDと診断された 128人の子どもたちを、調査当時の診断基準(DSM‐III‐R)で4年間にわたり5回評価した海外の調査によると、大人になるまでに6割の人たちが診断基準を満たさなくなりました。しかし、症状のすべてがなくなったわけではありません。診断基準のハードルを下げると、「症状がなくなった」と言える人は4割弱に減ります。

つまり、診断基準を満たさなくなった人の多くは、かなりの症状が残存しているのです。実際、子どもの時に診断された人のうち9割以上が、成人になっても日常生活での困難を抱えていました。

ADHDは、症状こそ軽くなることがあっても、何らかの日常生活の困難は持続しうることが明らかになり、生涯にわたって持続する発達障害(神経発達症)の一つと考えられるようになったのです。