かつて女性の辛さは「女三界に家無し」と表現されました。しかし現代、「本当に住む家が買えない、借りられない」という危機的状況に直面するケースも増えています。そして男女雇用機会均等法で社会に出た女性たちが、会社勤めをしていればそろそろ一斉に定年を迎える時期に…。雇均法世代である筆者は57歳、夫なし、子なし。フリーの記者・編集者。個人事業主ではあるが、見方によっては「無職」。ずっと賃貸派だった彼女が、60歳を目前に「家を買おう」と思い立ち、右往左往するリアルタイムを、心情とともに綴ります。
「テラハ」の世界に暮らす可能性はあるのかしら?
食堂から、美味しそうな匂いが漂って来ました。シンクとコンロのセットが計四つもある、料理教室みたいに広いキッチンで料理をしていたのは、推定28歳、長身の外国人男性でした。「Hey!」「Hello」。顔見知りらしき日本人女性(推定25歳)がキッチンに入ってきて、何やら言葉を交わしています。
彼女は、お茶をいれたらさくっと部屋に戻って行きました。キッチン前に広がる食堂エリアには、大小のテーブルがいくつか。3人がばらばらの場所で、パソコンを見たり携帯をいじったりしながら、それぞれご飯を食べています。ソファスペースになっている一画では、外国人と日本人の男性2人組が大画面でテレビゲームに興じていました――6月のとある土曜の午前中、都内某所のシェアハウスでの様子です。
この日、このシェアハウスの運営会社G社による現地説明会に参加しました。都内でリーズナブルに家を借りようと思ったらシェアハウスという手がある、と思い出したからです。かつては独身の若者だけの特権だと思われていたシェアハウスですが、最近は物件も運営会社も増えました。外国人や中高年など、独身の若者以外の人も住んでいるようです。
「家具も家電もいらないし、寂しくないから」と、「定年後に熟年離婚されて家を追い出され、若者に混じってシェアハウスで暮らしている男性」を実際に知っています。ならば、57歳・独身・フリーランス女性にも、めくるめく「テラハ」の世界に暮らす可能性はあるのかしら?――興味本位で、現地説明会に参加してみました。果たして……。