料理はすべて「昼のそば三昧コース」5500円から。手前は埼玉三芳在来を使った粗挽きそばがき。やわらかさの中にもコシがある。その後ろ右は蕎麦を殻ごと挽いて打つ鳥取伯耆在来の玄挽き。左が粗挽き。奥は前菜5品盛り。ほかに玉子焼きとせいろ、甘味がつく

希少な在来品種の味と香りを食べ比べ

数ある美味しい蕎麦店の中でも、在来種の蕎麦だけを扱う店はそうそうない。そんなレアな蕎麦で評判の一軒がここ「蕎麦おさめ」だ。

「在来種の蕎麦とは、昔から日本の各地方で品種改良することなく栽培され続けてきた蕎麦のこと。それぞれに異なる濃厚な甘みや香りが特徴です」とは、店主の納剣児さん。現在は20種ほどを常備しているそうだ。

蕎麦通らが絶賛する同店が、今年4月、六本木から目白に移転。築100年弱の古民家をリニューアルして新たなスタートを切った。

【テイクアウト】暮れともなれば年越しそばを販売している同店だけに、生蕎麦はテイクアウトもOK。写真は、長野の奈川在来で2人前2000円。奈川在来は甘みと旨みのある品種で、これは一昨年に収穫したもの。2年間寝かせているそうで、甘みが一段と濃密になっている。ちなみに品種は日替わりで、要予約。ランチを予約する際に、一言伝えたい

店名を染め抜いた暖簾をくぐり、靴を脱いで座敷に上がれば、広々とした室内は和モダンのシックな空間。その寛いだ雰囲気に、時の流れもしばし忘れてしまいそうだ。

移転をきっかけに始めた「昼のそば三昧コース」では、在来種の蕎麦を、そばがき、せいろ、粗挽き、玄挽きとさまざまな形で提供。喉越しの良いせいろは甘みのバランスのとれた千葉成田在来、噛むほどに旨みが立つ長野乗鞍在来はやや太めの粗挽きにと、適材適所。品種の持ち味を生かした打ち方で楽しませてくれる。