その「いいね!」は強制?媚び?
数年前に『凪のお暇』(TBS系列・2019年)というドラマが放送された。周囲のありとあらゆる人間に気遣いをしまくって、本来の自分を殺して“明るい素敵な女性”を演じていた凪(黒木華)。
ついにはストレスで倒れて、退社。自慢だったはずの恋人とも別れて、本来の自分を取り戻していく物語だった。
ドラマの中で、とても印象的なシーンがある。
虚像の人格が、爆破寸前を迎えていた凪。それでも毎日、同僚のインスタグラムを必ずチェック。「いいね!」のタップはもちろん、ストーリーズに足跡をつけて、スタンプを必死に送っていた。
そうしないと、明日からの同僚との関係性についていけないという。これは強制なのだろうか? それとも媚びなのだろうか? そもそもこれはドラマの世界の話なのか? 喉にいつまでも引っかかった小骨のように、気になってしまう。
そんな私にこれらが現実だと知る機会が訪れる。
2022年に『45cmの距離感』(WAVE出版)というエッセイを書いた。さんざん人間関係の距離感で苦労をしてきた私によるエピソードや、解決策を並べている。
発売当時からしばらくの間、多くの読者からSNSにDMをもらった(誹謗中傷、ご意見も含む)。詳細は割愛するけれど、一番目立った悩みは「SNSによる人間関係がしんどい」というもの。
「上司がウザく、フォローはしなくてはいけない風潮が面倒だ」
「友人のフォローを外したい」
「グループを抜けると友達が減る」
「なんだか投稿することが義務みたいで……でもやめられない」
凪がドラマで披露していたことは、現実だった。大量で全てに返信はできなかったけれど、(失礼ながら)この場をお借りして、一斉返信をするのなら……
「とりあえず、相手のミュートボタンをタップしましょう」
としたい。
集団行動が苦手で、のほほん自由業の私ではあるけれど、妬み、嫉みと、人並みにS N Sの生き苦しさは感じたことがある。その経験から編み出した、ミュートの使用方法について、あれこれと綴ろう。