(画=一ノ関圭)
詩人の伊藤比呂美さんによる『婦人公論』の連載「猫婆犬婆(ねこばばあ いぬばばあ)」。伊藤さんが熊本で犬2匹(クレイマー、チトー)、猫2匹(メイ、テイラー)と暮らす日常を綴ります。今回は「『夏のまご祭り』開催中」。これまで、まごというものに積極的に関わってこなかった伊藤さんですが、トメのお産でカノコの子ども2人の面倒をみることになったそうで――(画=一ノ関圭)

カノコに子どもが二人いる。アイダ(五年生)とその弟(二年生)。それからトメにしーちゃん(もうすぐ三か月)がいる。

あたしはこれまで、まごというものにたいして興味を持ってなかった。娘の方がおもしろかった。娘たちと電話しようとは思うが、まごたちと電話しようとかZoomしようとかいう気はぜんぜん起きなかった。しゃべったってろくな会話にならないし、いつもカノコが間にいるし、そんならカノコとしゃべりたいということになっちゃうのだ。ところが五月に、あたしはかれらの世話をほんの短期間することになった。というのもトメのお産があったからだ。

五月、トメの予定日の前後、あたしはアメリカで仕事があり、トメに「お産の手伝いに行こうか」と言ったら「来なくていい」と言われた。「二人でできるし、夫も産休取るし、八月に来た方が私たちも慣れてるだろうし、子どももかわいくなってるし」と言われて、それもそうだと納得し、五月は仕事に徹し、朗読会の会場の近くにカノコが住んでいるので、そこには立ち寄ることにした。

そしたら五月、トメのお産が早まって帝王切開になり、退院したけど夫はまだ産休を取れず、助けが要るという。それで姉たちが交代で駆けつけることになり、あたしはちょうどカノコの家に着いたところで、カノコが、おかーさん、子どもたちを頼むと飛び出していったので、あたしが二人の面倒をしばし見ることになった。ところが、初めてカノコなしで向かい合ったアイダは、いつのまにか思春期直前になっていたのだ。