子育てサイトの闇には、毒性がある

なぜなら、そこはドラマや映画なんかより、よっぽど衝撃的なストーリーに満ちているからだ。障碍を持つ子どもの世話をパートナーに押し付け、複数の相手と浮気している男。4人の子どもを残し、有り金をすべて持って若い女性と逃げた夫。夫婦喧嘩をするたびに、首を絞められて殺されそうになる女性。自分の娘と同じ年代の少女をグルーミングしている夫……。

とにかく凄絶だ。かわいらしい子育てサイトにこういう掲示板が存在しているのがまた怖い。しかし、それらを読んでいるうち、わたしはあることに気づいた。育児に関する掲示板ではいろんな人が多様な経験や意見を投稿しているのに、ここに書かれている「リレーションシップ」は、ぜんぶ同じ関係に見えてくるのだ。ひどい男と虐げられる女。投稿の内容はその筋書きに貫かれている。

読んだ投稿がすべて実話とは限らないとも思った。でも、実話でなかったとしても、そこには別の闇が広がっている。つまり、男性の育児参加が進んでいるようでいて、やはりその大半を背負わされている女性が多いから、「ひどい男と虐げられる女」の構図ばかりになってしまうのではないか。もちろん、投稿は実話なのかもしれない。DVを受けているなら逃げたほうがいいし、少女をグルーミングしている男がいたら警察に通報したほうがいいが、それができないから掲示板に書いているのかもしれない。だが、これらに虚構が混ざっていたとして、こういう一方的な話を女性たちに書かせる暗いパワーは軽視できるものではない。

前述の知人の娘さんは、この暗いパワーに呑み込まれてしまったのだろう。そのうち自分でも書き込みをするようになり、すべての男性が虐待者のように見える現象が起き始め、外出もままならない状況になったらしい。現在は依存症から回復しているそうだが、うっかり掲示板を覗いたら、再び依存しないか自信がないと言っているそうだ。子育てサイトの闇には、毒性がある。