4連覇を果たした05年、3区の井手貴教(左)からたすきを受ける駒大の田中宏樹(写真:読売新聞写真部)
まもなく第100回箱根駅伝が開催されます。昨年まではコロナの影響で叶わなかった沿道での応援も、今年から解禁になりました。これまでさまざまなドラマが繰り広げられてきた箱根駅伝。記念すべき第100回を前に、これまでの箱根駅伝でのエピソードを紹介します。今回は、2002~05年に4連覇を果たした駒澤大学のエピソードです。当時の主将、田中宏樹選手は「4連覇は駒大がチームとして成し遂げたことで、たまたま僕が走ったというだけ」と言っていて――。

去年までは先輩に、今年は後輩に

2005年1月、箱根駅伝で駒大が史上5校目の4連覇を成し遂げた直後のことだ。主将として祝勝会で壇上に立った田中宏樹は、快挙に沸く約1000人のOBたちを前に、こう語ったことを鮮明に覚えている。

「去年までは先輩方に勝たせていただきました。そして今年は、後輩に勝たせてもらいました」。用意していたわけではなく自然に、心の底から出た言葉だった。

田中は箱根に4度出場し、その全ての大会で頂点に立った希有な選手だ。4連覇した駒大では田中と塩川雄也の2人だけ。99回の箱根の歴史を見渡しても、4連覇以上を果たした日大、中大(6連覇)、日体大(5連覇)、順大、青学大を合わせた6校で14人しかいない快挙だ。

だが、田中はその事実を走り終えてしばらくしてから知った。両親が教えてくれたが、そう聞いてもそのこと自体、それほど重要とも思わなかった。

「3年と4年で4区を走らせてもらい、2年連続で区間賞を獲得しました。これは僕の記録なのでうれしかった。でも、4連覇は駒大がチームとして成し遂げたことで、たまたま僕が走ったというだけ。駒大の力だと思います」。

当時からそう思っていたから、祝勝会で先輩、後輩への感謝が口をついたのだと考えている。