「平成の常勝軍団」の強さの理由

箱根駅伝のメンバーの座をかけた年末のタイムトライアルでは、約60人の部員全員が自己ベストに迫る好タイムをたたき出した。

田中は「箱根メンバーの10人だけでは勝てない。部員全員が勝ちたいという思いを共有し、誰が代わっても戦える状態。そうなって初めて優勝を狙える」と語る。

それは、23年の箱根駅伝で学生駅伝3冠を達成した大八木総監督の言葉と奇妙なまでに一致している。

田中は「4連覇したチームはまさにそうだった。迎えた箱根当日の朝、感じたのは緊張や重圧ではなく、『やっと本番が来た。これなら勝てる』というほっとした感覚だった」という。

その感覚は現実になった。往路は序盤に出遅れたが、4区の田中が区間賞で3位に浮上。トップ東海大と30秒差で復路につなぎ、7区で先頭を奪った。9区の塩川が区間新記録で突き放し、4連覇を達成した。

「平成の常勝軍団」。駒大は尊敬の念を込めてそう呼ばれた。

「4度走った僕自身、個人では目立った成績を残せる選手ではなかった。でも、走った僕たちだけでなく、リザーブの選手も、マネジャーも、部に関わる全員が本気で『勝ちたい』と思っていた。常勝軍団の強さの理由を聞かれれば、そう答えます」。

田中が語るように、何より強固な団結力が王者の土台を支えていた。

※本稿は、『箱根駅伝-襷がつなぐ挑戦』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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箱根駅伝-襷がつなぐ挑戦』(著:読売新聞運動部/中央公論新社)

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