ウクライナの伝統楽器バンドゥーラ。65本の弦を爪で弾く(写真提供:徳間書店)
2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。今なお戦争は続き、ウクライナの多くの人々が生活を脅かされています。そのようななか「今のウクライナの姿だけでなく、本来の美しく豊かなウクライナの大地、そこで自由に生きるウクライナの人々の姿も日本の人に知っていただけるとうれしいです」と語るのは、ウクライナ出身で、日本で活動する数少ないバンドゥーラ奏者の一人であるカテリーナさん。カテリーナさんは戦争によって「『当たり前』という概念も変わりました」と言っていて――。

戦争によって変わってしまった現実

2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、ウクライナの祖国を守る戦争が始まりました。それからしばらくは、自分の中で相反する気持ちがぶつかり合いました。

「今すぐ、ウクライナにいる家族を安全な日本に呼び寄せなければ」

という気持ちと、

「なぜ自分だけ平和な場所にいるの? 今すぐウクライナに帰りたい」

という気持ちです。

そのときは、「なぜ自分だけ助かっているの? ずるいのでは?」と自分を責めてしまっていました。

戦争が始まってすぐの頃、ウクライナにいる友人たちにあちこち連絡をして、「大丈夫? 何か手伝ってほしいとか、欲しいものがあるなら、なんでも言ってね」と伝えたら、「そんな平和なところに居ながら、何よ、偉そうに。手伝うとか、何か欲しいものがあるとか言うのだったら、ウクライナに今すぐ帰ってきて!」と言われたことがありました。

……とてもショックでした。

良かれと思ったことがすべて裏目に出る。喜んでもらえると思ったのに、逆に怒りを買ってしまう。同じ国の者同士でも、まったく価値観がずれてしまう。悲しいけれど、戦争によって変わってしまった現実のひとつです。