酸ヶ湯の入り口

目指すは「ヒバ千人風呂」

翌日、車には営業先の人と、その友人、そしてわたしの3人が乗っていた。車は古い珍しいタイプのポルシェで、道を這っているのかと感じるほど車高が低かった。車内ではポルシェの説明が続いたが、わたしは聞いていなかった。

道中、早朝の八甲田山の林道は空気がピンとはっているようで気持ちがよかった。雲上の霊泉と称される酸ヶ湯温泉は海抜約900m、八甲田山中にある。

大きな建物と広い駐車場がみえてきて、そこに酸ヶ湯はあった。

目指すは総ヒバ造りの大浴場「ヒバ千人風呂」混浴のみ(この日はたまたま女性専用時間であった)

160畳もの浴室に熱の湯・冷の湯・四分六分の湯・湯滝など4つの異なる源泉がある。三百年以上親しまれてきたこの風呂は柱一本ないヒバ造りである。

本連載から生まれた青木さんの著書『母』