修正には「時間」が必要

小脳の修正には「時間」が必要です。

ジョンズ・ホプキンズ大学(アメリカ)のシャドメア博士らは、「目標に向かって腕を伸ばすときに邪魔する力が加わっても、動きを修正して腕を伸ばす」という実験を行いました。その際、「4秒の休み」を入れた場合と「14秒の休み」を入れた場合を比較し、14秒の群のほうが早く上達した、という実験結果を得ました。(これは14秒がベストという意味ではなく、4秒より14秒のほうが効果的だったという意味です)

「上手くなるには、とにかく回数を積み重ねなければ」と考えてしまうと、修正する時間がないまま、次の回の運動をやってしまうことになります。そうならないように「小脳に時間を与える」を忘れずにおきたいところです。

『可能性にアクセスするパフォーマンス医学』(著:二重作拓也/星海社新書)

一流のアスリートやパフォーマーたちが、鏡の前でフォームの習得に十分な時間をかけるのも、小脳による修正という意味で実に理に適った行為ということになります。

あのマイケル・ジャクソンも来日時、宿泊先のホテルの部屋の鏡の前に水溜りができるほど、フォームチェックを繰り返したそうです。

前頭前野における運動イメージからスタートした意図的な運動は、回数を重ねるごとによりシンプルに、滑らかに、巧みに、スムーズになっていきます。そうやって完成した運動のプログラムは「運動モデル」として小脳にコピーされると考えられています。

いったん運動モデルがコピーされると、「ここをこうやって、そこはこう動かして」といった手順を意識せずに、「気がついたら勝手に動いていた」「何も考えずに反応していた」「身体に完全にまかせて動けた」といった感じで、潜在意識下で運動を遂行できるようになります。

小脳に任せる。身体に任せる。その領域に至るための3つの要素、失敗、修正、時間。パフォーマンス向上を目指す皆さんと共有しておきたい背景です。