ゴールを想定すると出力される運動のレベルが上がる

早速、シンプルに右手(あるいは左手)を強く握って硬くする、というのをやってみましょう。

A:右手をグーの形に、思いっ切り強く、硬く握る。
B:右手をグーの形に、石のように強く、硬く握る。

さてAとB、どちらの方が強く、硬く握れたでしょうか?

おそらくBのほうだと思います。Bの「石のように」の情報によって、脳は記憶のネットワークに保存されている「石の硬さ」と、「握っている時点での手の硬さ」を比較します。比較した結果、その差を埋めるように「まだまだ石の硬さじゃないな、もっと石に近づけねば」と思いながら運動するのがBになります。

Aは目指す硬さがわからないまま運動しているので、比較が無く、差もありません。手が石の硬さになるはずがないのですが、石というゴール(理想)を想定することにより、運動イメージがより明確になり、出力される運動のレベルも上がるというわけです。

柔らかく流れるように動きたい場合は、「もっと柔らかく」ではなく「身体全体をタコのようにグニャグニャと動く」あるいは、「水のように変幻自在に動く」といった模範をつくっておくと、「あ、ここがまだ硬いかも」「今のは流れるように動けた」「タコの動きを動画で確認してみよう」など、模範の動きと、現実の動きの差を感じながら動くことができます。

グーの形にした実際の手の写真(左)とレントゲン(右)(『可能性にアクセスするパフォーマンス医学』(星海社新書)より)