ロシア軍の攻撃で破壊された公立学校(ウクライナでは小学校から高校までひとつの学校に通う)。手前にあるのはスクールバスだ(ザポリージャ南東の町オリヒウ/撮影◎筆者)
戦火の止まぬウクライナ。ロシア軍の攻撃が相次ぐなか、今も戦闘地域の町や村にとどまる高齢者がいる。危険や不安と隣り合わせの過酷な日々。人々の苦悩の声を現地で聞いた

最前線の町、オリヒウの惨状

ウクライナ南東部にあるオリヒウは、ロシア軍の陣地にほど近い最前線の町だ。住民はどんな状況にあるのか。5月下旬、私はウクライナ軍司令部の許可を得て、現地に向かった。

ドーン、ゴゴーン……。雷が轟くような重い音が響きわたる。7キロ先のロシア軍が砲撃してくる音だ。絶え間なく撃ち込まれる砲弾。すでに住民のほとんどが、別の町や国外に避難した。大通りに人影はなく、商店は軒並み閉まっている。

防弾ベストとヘルメットを着用し、地元の警官とともに町の中を歩いた。どの家も屋根や壁が崩れ落ちている。地面のあちらこちらをえぐるように開いた10メートルを超える大きな穴。ロシア軍機が投下した大型誘導爆弾が炸裂した痕だ。

被害の様子を撮影していたその時、突然、ヒューッと空気を切り裂く音が上空から聞こえてきた。私のすぐ真上を砲弾がかすめ、少し先に着弾する。「ロシア軍が小型のドローンを飛ばして偵察しているかもしれない。同じ場所にとどまっていると狙われる」と警官は声を強めた。

さらに進むと、公立学校があった。3階建ての校舎の真ん中が、まるで巨人に踏みつぶされたかのごとく崩れている。むき出しになった黒板や机。かつて子どもたちの元気な声があふれていた校庭は瓦礫に埋もれ、スクールバスがひしゃげていた。

子どもたちの目に、この光景はどう映るのだろう。地面に散らばった教科書とノートのページが、ひらひらと風に揺れていた。

 

(地図製作◎アジアプレス)