「住民がいる限り支援を続ける」と語るマンドリチ副市長(オリヒウ/撮影◎筆者)

スビトラーナ・マンドリチ副市長(51歳)は、この避難拠点で連日、ボランティアスタッフとともに住民の支援にあたっていた。彼女は、町の惨状に、苦しい心境を打ち明けた。

「地元の人間として、副市長として、悲痛な思いです。町が破壊し尽くされるのを見るのはつらく、また恐ろしい」

食堂には壁一面を覆うほどの大きなウクライナ国旗が掲げてあった。避難所を訪れた人道支援団体スタッフらが、住民へのメッセージを旗に寄せ書きしていた。「あなたもぜひ」と副市長に請われ、私も小さく書き添えた。「一日も早く皆さまに平和が訪れますように」。

だが、そんな願いは容赦なく打ち砕かれた。7月10日、この学校をロシア軍が攻撃したのだ。校舎の半分が跡形もなく吹き飛び、ボランティアスタッフや医師ら7人が犠牲となった。

地元警察が公表した映像には、瓦礫の下から遺体が次々と運ばれていく様子が映し出されていた。ウクライナ検察当局は、これを戦争犯罪として捜査すると表明。戦火に包まれた町で、行き場を失った高齢者が身を寄せる最後の避難所である学校さえもが標的となったのだ。