せっかくですから、今回ぜひ知っていただきたいのが日本の伝統色です。日本の伝統色は渋い色も多いですが、植物を使った自然染料から生まれた色彩なので、味わい深い美しさがあります。

そして微妙に異なる色の一つ一つに、素敵な名前がついており、その数はゆうに1000を超えます。たとえば鴇色(ときいろ)、猩々緋(しょうじょうひ)、黄櫨染(こうろぜん)、煤竹色(すすたけいろ)、水浅葱(みずあさぎ)、錆桔梗(さびききょう)……美しい言葉が使われているので、色の名前を追うだけでも、ゆかしい気持ちになりませんか? 

北原白秋が作詞した歌曲「城ヶ島の雨」には、「利休鼠(りきゅうねずみ)の雨が降る」というくだりがあります。これは利休好みの、緑色を帯びた灰色の雨が降る、ということです。

日本の色彩文化には、世界に誇れる豊かさがあります。伝統色の名前の由来などを記した本もあるようですし、ときにはそうした自国の文化に目を向け、美意識を磨いてはいかがでしょう。

●今月の書「色」