筆者の関容子さん(右)と

世襲制でないのは唯一、文楽だけ

世に師弟関係ほど深くて濃い絆はないように思う。苦しいことが多くてもそういう人生は素敵だな、と思えてくる。

それで第三の転機は?

――この10月で70歳になったこと。ここで気を引き締めて新たなスタートを切ることですね。60は60の芸、70は70の芸というものがありますから。肉体の衰えと芸の充実とのせめぎ合いですね。重い舞台下駄をはいて、重い人形を持って、舞台の一段高くなってるところへ上がる時なんか、やはり年齢を感じます。

ついこの9月、いよいよ東京の国立劇場とのお別れで、『菅原伝授手習鑑』「天拝山」の段、菅丞相を遣いましたが、右手に梅の枝を持っての激しい動きがあり、手首にものすごい負担がかかって腱鞘炎になりました。

それでも能狂言とか歌舞伎とか邦楽とか、伝統芸能の中で世襲制でないのは唯一、文楽だけなんですよ。頑張れば頑張っただけのことはある。足遣い10年、左遣い10年とか、修業のつらさばかり聞くかもしれませんが、近頃はそんなこともありません。

努力次第でちゃんとこうして認めてもらえる。大歓迎しますんで、どうか若い人、弟子入り志願、待ってます。

ほんとに。日本文化の宝を末永く受け継いでいってもらいたいものですね。