将来を嘱望されるシンガー、エンタテイナーとして目覚ましい成長を遂げていたシヅ子だったがー-(写真提供:Photo AC)
10月2日から放送が始まったNHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』。その主人公のモデルである昭和の大スター・笠置シヅ子について、「歌が大好きな風呂屋の少女は、やがて<ブギの女王>として一世を風靡していく」と語るのは、娯楽映画研究家でオトナの歌謡曲プロデューサーの佐藤利明さん。佐藤さんいわく「幼い頃からシヅ子は、いつも養父母や弟のことを優先してきた」そうで――。(記事はあくまで史実に基づいたものですが、ドラマの展開と重なる可能性がございます。ご注意ください)

弟の入営

SGD(松竹楽劇団)に抜擢され、シヅ子が上京する3ヶ月前の1938(昭和13)年1月、3歳下の最愛の弟・八郎に召集令状が届いた。

前年に始まった日中戦争は、激化の一途をたどり、若者たちが次々と召集されていた。

1月8日、香川県丸亀市の陸軍第十一師団に向かう直前、八郎は「生きて帰れるかどうかわからないから、姉ちゃんに押し付けるようで気の毒だが、僕に代わって家のことは、あんじょう頼みまっせ」とシヅ子に今後のことを託した。

何よりも家族が大事。幼い頃からシヅ子は、いつも養父母や弟のことを優先してきた。

シヅ子が資金協力をして、八郎は父・音吉と理髪店を切り盛りしていたが、唯一残った実子・八郎の入営は、音吉にとっても大きなショックだった。