養老孟司への質問

Q.箱根の養老山荘では、どんな暮らしですか。

A.週に3日ぐらいは来て、もっぱら一人で虫の整理。そのために生きているようなもんです。昼食は抜くことが多い。要するに面倒くさい。食卓に向かうのも僕にとっては作業。標本づくりのような細かい作業をしていると、作業がぶつかるからです。

夜寝る時間は決まってません。ただ、虫の整理をしていると、早く寝てどうするって感じ(笑)。少々眠くなっても作業はできるが、ある程度以上眠くなると、やめて横になる。そして、やりかけたことを次の日にどう整理するか、イメージトレーニングしながら寝る。とにかく未整理の虫が大量にあるんで、片づけたいの一心です。

作業すると腰が痛くなるので休憩はいれる。ただぼけっとするのもなんなので、本を読んだり、ドラマを観たり、楽なことをしています。最近は老眼で本が読みにくいよ。

60代、70代までは、すすきの原っぱを横切って30分ほど行くとある森まで、猪の足跡しかないような山道を散歩しながら虫採りをしていました。今はもう、体力がないし、危険だからダメですね。

 

※本稿は、『なるようになる。――僕はこんなふうに生きてきた』(中央公論新社)の一部を再編集したものです


『なるようになる。――僕はこんなふうに生きてきた』(著:養老 孟司/中央公論新社)

人生は、なるようになる――これがひとまずの結論です。幼少期の最初の記憶から、虫と猫とバカの壁と出会った86年を語りつくす。読売新聞の好評連載「時代の証言者」(聞き手・鵜飼哲夫)を大幅加筆、「50の質問」を増補。養老先生はじめての自伝。