とにかくお金は分散

幸いホテルに預けていたスーツケースの中には、出発時に母から「何かあったら使いなさい、現金は邪魔にならないから」と渡された、10万円分の日本円が入っていました。下着ケースの中に入れていたのです。

そのお金と盗難届の書類を手に、パリ行きの列車に乗車。ドキドキしながら席に座っていると、スペインの国境で検査官が乗ってきました。

『大人の旅はどこへでも行ける 50代からの大人ひとり旅』(著:地曳いく子/扶桑社)

「スペインでバッグを盗られてパスポートがない。スペインの警察でいただいた盗難届の書類と帰りの日本行きの航空券はあるのだけど」と言うと、「日本人か、それは大変だったね。お気をつけて」。とあっさり検査をパスしてしまいました。

気が抜けたというか、「こんなんでいいのか? ヨーロッパの国境警備」とも思いましたが、おとなしく検査官にお礼を言い、無事にパリに到着。母からもらった日本円をフランに両替して日本領事館へ行きました。

パスポート発行には時間がかかるとのことでしたが、幸いこれも母の教えでパスポートのコピーを下着ケースに入れておいたため、一時帰国のための書類を出してもらい帰国することができました。

これはかなり昔の話なので、今ではEUに加盟していない国同士の場合など、パスポートなしで国境を越えるのは難しい話かもしれませんが、最悪パスポートは現地の日本領事館で申請すれば再発行してもらえますし、帰国するだけなら一時帰国のための書類も数日で出してもらえます。

とにかくお金は分散しておくのがポイントです。パスポートのコピーもね。