「風車」の記号
「風車」の記号の適用は発電を目的としたものに限られている。
こちらも地球温暖化防止の世界的な趨勢の中で持続可能なエネルギー源として建設が相次いでおり、久しぶりに訪れた海岸に、以前はなかった巨大な風車が林立しているのに驚いた経験は誰にでもあるのではないだろうか。
応募総数は6万1044点で、当然ながら3枚または4枚の羽根をデザインしたものが多かった。
決定したのは多くの発電用風車に用いられている3枚羽根であったが、120度の角度で3枚が広げられたものをどう表示するかに苦労したようだ。
羽根を1本線で表現する場合、1枚の羽根を真上にすれば支柱から羽根が2枚出ているようにしか見えず、羽根を真下にすればY字形になって意味不明になってしまう。
そこで上の羽根を20度ほど左へ傾けたものになった。
表記の対象となるのは「発電を目的に設置され、特に高くそびえて好目標となるもの」である。記号化が検討された平成17年10月末時点では約1100基であったが、11年後の同28年には倍の2200基を超えている。
※本稿は、『地図記号のひみつ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『地図記号のひみつ』(著:今尾恵介/中央公論新社)
学校で習って、誰もが親しんでいる地図記号。地図記号からは、明治から令和に至る日本社会の変貌が読み取れるのだ。中学生の頃から地形図に親しんできた地図研究家が、地図記号の奥深い世界を紹介する。