「母の部屋と妹の部屋の間に居間があって、そこで油絵を制作し、個展も各地で開いていました」

母は入退院を繰り返して、最後は寝たきりになって。おしもの世話もしたけれど、私は平気。さっきまでごちそうだったものが体の中をめぐって出てきたものだから、汚いなんて思ったら失礼でしょう?

うんちもおしっこも、出たばかりはホカホカと温かくて、「すごいなあ、生きてるってこういうことなんだ」と感動。「お母さん、ほらこんなに出たよ」と見せては、「イヤー!」なんて2人で大笑いして。

母の部屋と妹の部屋の間に居間があって、そこで油絵を制作し、個展も各地で開いていました。あらま、私ったら、家庭と仕事を両立できる人だったのよね(笑)。経験してみてわかったのだけれど、人のお世話をして喜んでもらうと、逆に元気をもらえるの。

おむつを取り替えて温かいタオルで拭いてあげて相手が気持ちよさそうにすると、自分も気持ちよくなる。老老介護の日々は6年ほど続きましたが、意外と疲れは感じませんでした。

母は最期まで自宅にいて、私の手を握って亡くなりました。大好きな讃美歌のCDをかけて、「聴こえる?」と声をかけたら小さくうなずいてくれたのを覚えています。

その少し後に、妹は病院で亡くなりました。胃ろうの提案もあったのだけど、「本人も嫌がっていたから延命はしないでください」と泣いてお願いをして了解を得ました。ふと見たら先生たちの鼻とまぶたも赤くなっていて、気持ちが通じたような思いがしたものです。