阿岐本はうなずいた。
「おっしゃるとおりです。……で、この神社は、単立ですか?」
大木は再び、きょとんとした顔になる。
「単立かどうかと訊かれたら、そうだとこたえるしかありませんね。神社は寺なんかと違って宗派があるわけじゃありませんから」
「そうなんですか?」
「神社は勧請(かんじょう)を受けます。それで神様をお祀(まつ)りできるわけです」
「勧請……?」
「分霊とも申します。神霊を分けてもらうのです。八幡神社とか稲荷神社とか、全国にたくさんあるでしょう。これは勧請してもらって広まるわけです。でも、各神社は独立しています」
「コンビニのフランチャイズみたいなものですか?」
「ま、そうかもしれません。ですから宗派と組織的につながっている寺とは違うのです」
話を聞いてうなずいていた阿岐本が唐突に言った。
「突然お邪魔してすみませんでした。では、これで失礼することにします」
これ以上大木の話を聞く必要がないと思ったのか、それとも何か閃いたのか。日村は、阿岐本が急に話を切り上げたのには理由があるような気がした。
車に戻ると、阿岐本は言った。
「さっきの話だがな……」
「さっきの話?」
「昨日聞いたことで、引っかかることがあると言っただろう」
「はい」
阿岐本は稔に、事務所に戻るように命じると、日村に言った。
「ちょっと調べてみたほうがいいかもしれねえな」
「え……?」
結局、首を突っこむことになるのか。面倒なことにならないといいが……。日村は祈りたい気分だった。