気の強い高齢者ほどやっかいなものはない

「ねえねえ聞いてよ。ウチの姑89歳なんだけど。未だに電動自転車で買い物に出掛けようとするから『転ぶと危ないから車で送りましょうか?』って声を掛けたら、『あなたの世話になるつもりはないから!』って言い返されて。それからは、気を遣ったところで気分が悪くなるだけだからもう放っておこうと思って。こっちからは何も言わないようにしてるんだ」

スーパーの店先で会った同級生が苦々しい表情で訴えてくる。

「ウチの母も何か言うと、必ず憎まれ口が帰ってくるよ」

私がカラオケ絡みのやり取り(老母はカラオケ教室に通っている)を伝えると、

「ウチの姑も相当だけど、そっちもかなりのもんだね」

老親あるあるで話が盛り上がる。

「『足下がおぼつかなくなってきてるから気をつけて』って言われたら、『そうだね。気をつけなきゃね』で済む話が、『年寄り扱いするな』とか『お前は私を馬鹿にしてる』とかって言い返してくるし。『代わりにやろうか?』って声を掛けると、『口を出してくるな!』って親の敵でも見るような目で睨み返してくるし。なぜそんなに意固地になるのかさっぱりわかんないんだよね」

「それも認知症の症状のひとつだって言われたらそれまでなんだけど。一緒に暮らしてる人間は、毎日それをやられたらたまんないよ」

「ウチの姑も相当だけど、そっちもかなりのもんだね」(写真提供:Photo AC)

ほんの数分でも、介護の経験がある者同士で話をすると気持ちはかなり軽くなる。とにかく溜めないこと。一人で抱え込んだところで何ひとついいことはない。

吐き出し合うことで、新たな情報を得ることもあるのだから、井戸端会議大いに結構。遠慮しないで愚痴を言い合わないと、長丁場となる介護などやってられないのだ。